寒冷前線通過を振り返る.水道筋に注目してみます

5月2日の夜から4日朝にかけて,日本列島を寒冷前線が通過していきました.

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左上:3日9時 右上:3日21時 左下:4日9時 右下:4日9時 地上天気図

とにかく寒冷前線の走向が南北にキツくて,南寄りの強風で暖湿気が流れ込み,太平洋側の特に南斜面の山沿いで雨量が多くなりそうな形です.このようになるのは,2日前あたりからちゃんと予想されていました.実際には雨量はどんな感じだったか,広く積算降水量の分布を見てみます.

RSM_16_0504_19002日20時~4日19時の48時間積算降水量(解析雨量も考慮してます)

九州地方は寒冷前線の通過に伴って,特に時間50ミリ以上と短時間に降る雨量が多くなった所が多く,屋久島では時間70ミリを記録しました.下層(925hPa付近)に入ってくる暖湿気は342Kぐらいの予想でしたから,予想通りに高相当温位の空気が流れ込んだ結果でしょう.もうそんな雨が降る時期になってきたんですねー.その後,寒冷前線の東進とともに,暖湿気の突っ込みどころも次第に東へ移動し,高知県・和歌山県・静岡県などやはり太平洋側の南側斜面でとくに降水量が多くなる傾向になっているようです.おや?一部,純粋な太平洋側に面していない所で,結構雨量が多くなっている所がありませんか?そうそう,山口県と広島県の県境付近…なんやなんや.

<強い南寄りの風が吹き続けたところ…>

sekisannhuusoku2日20時から4日19時の48時間積算風速

積算風速なんて聞いたことないですね.単純に毎正時の風速を全部足したもので,強い風が吹き続けた所ランキングみたいなざっくりで見ていただきたいのですが.1位の室戸岬は定番ですからいいのですが,2位の和歌山県・友ヶ島,4位の愛媛県・瀬戸,ここはなんだなんだ.すごい上位に食い込んでるけど.でも,この2か所はホントに南寄りの風が強い時をよく見かけるんですよ.うわ,スゴイ吹いてるな…と.それは,2地点が位置している場所を知れば,なんとなく理由が分かるかも知れません.友ヶ島は紀伊水道,瀬戸は豊後水道にあるんです.

<水道スジってやっぱ重要クサイ>

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そもそも水道ってのは…えーと,ウィキペディアによると(・∀・;)「海において陸地が両側に迫って狭くなった通路状の箇所のこと」ということで,うん,まさに!としか言いようがないのですが,このような「陸地が両側に迫っている」所を,今回のような気圧配置型で南寄りの強風が吹きこんだら,すごい収束しそうじゃないですか?しかも,豊後水道も紀伊水道も,南側に開いて北側が窄まってるし.

話を戻しますと,つまり山口県と広島県の県境付近は,豊後水道を抜けて入ってくる暖湿気のドン突きになっていて,しかも山になっている.その南斜面で周りよりも降水量が多くなっているようです.水道スジは「どこでどんな雨が降るのか?」を細かく地域を絞って考える時には無視できない重要な地形効果ということです.

<地形効果って山にぶつかって強制上昇…だけじゃない>

MSM_16_0503_23003日23時 アメダス風・レーダーエコー合成図

今回,紀伊水道を抜けた所では総降水量が上位に入るような雨が降った所はありませんでしたが,それでもレーダーエコーを見ると,局地的に線状の強いエコーができている所がありました.紀伊水道を吹きぬけてきた南南東の風と前線付近の南西風が水平収束しているようで,このようにただ寒冷前線の通過に伴う雨,というだけではなく,さらにもうひと押し,周りよりも雲が発達してしまう可能性があるということです.

そう言えば,ウィキペディアで「水道」を調べたら,水道は「海峡」や「瀬戸」と同じような意味ということが分かりました…ええっ!そうだったのかー.アメダス「瀬戸」じは佐多岬半島の瀬戸町にあるんですが,その「瀬戸」ってのは,その地形を表す名前だったのかぁ.なるほどなるほど,すると,アメダスの名前から気象の地域特性が分かる所て他にもあるのかもね!はーっ,地理をもっと勉強しとけばよかったわー

2016年5月5日~天気はコロコロ変わる~   合同会社てんコロ.
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