台風第18号の外観。「異様な北風の強さと高気圧」

MSM_13_0917_1100<台風第18号の経路>

台風第18号は、16日朝に愛知県に上陸してそのまま東日本を縦断、東北地方に進んで三陸沖に抜けました。各地に大変な被害をもたらしましたが、最も驚いたのはやはり「特別警報」が発表された、京都・滋賀・福井の大雨です。どうしてこんなふうになったのか、いろいろ考えてみると、勉強になることがたくさんありました。この台風による雨の、総降水量の分布を見てみます。

MSM_13_0917_0900 MSM_13_0917_0900色分け

それぞれ、クリックして拡大して見てください。左の図は、全国的に見た総降水量の分布を等値線で表したものです。大きく見ると、九州、四国、中国地方より東の地方は広い範囲で結構雨が降ったことが分かります。最も多くなった、近畿地方~東海地方あたりを拡大したものが、右の図です。斬新な色遣いになっていて分かりにくいかも知れませんが、凡例と図の中に示した通り、明るい緑色部分が400ミリ以上、濃い青色部分が200ミリ以上、水色部分は150ミリ以上を表しています。これを見ると、紀伊半島、静岡県の山沿い、関東の山沿いで、降水量が多くなっているのが、まず地形性のもの(台風の東側の風の吹きつけ)であることが分かります。しかし、一瞬分からないのが、京都、福井、滋賀県の降水量の多さです。前も書きましたが、総降水量が500ミリに達した太平洋側ばかりに目が行って、日本海側のこれらの地域で300ミリ、400ミリの雨が特別警報に値することに気が付きませんでした。

<天気図から見てみよう>

今回の台風第18号の外観を、実況や天気図を見ながら詳しく見てみます。まずは、地上天気図と赤外画像です。

SPAS_13_0916_0300 SAT_H_13_0916_0900

左側は、まだ台風の中心は紀伊半島沖にある、16日3時の天気図です。特徴として、台風の北側に前線がある…ということが分かります。台風+前線=良からぬことが起こる、というのは気象予報士試験でも常套問題ですし、今では特に天気の勉強をしていない人にも有名です。今回、さらに目につくのは、西側の高気圧も東側の高気圧も結構しっかり、日本付近に張り出しているということです。台風は、この西と東のデッカイおすもうさん(高気圧)に挟まれて、こぜまい所を通らされた形になっていたようなのです。それは赤外画像を見ても、南北にシュッと伸びた雲域として表れていることから分かります。

<台風の中心の北西側の異様な暴風>

台風が上陸する寸前の風の様子を見てみます。

MSM_13_0916_0600風

16日朝6時のレーダーエコーとアメダスの風の分布です。台風中心付近の遠州灘に南東風の暴風が吹いているのが分かりますし、広い範囲で強風が吹いているということも分かります。特に、北西側の北陸~近畿地方に吹いている北寄りの風もかなりの勢いです。数字的には、朝5時頃に神戸で最大風速26.1m/s、最大瞬間風速38.3m/s、いずれも北北西の風です。さらに、MSMの予想図ではありますが、850hPaの相当温位と風の流線図を見てみます。

MSM_13_0915_2100 MSM_13_0916_0300 MSM_13_0916_0600<左上から、15日21時、16日3時、6時>

前線として表現されている、台風の北側の相当温位のコントラストが、かなり大きいです。このコントラストが大きい所つまり前線帯の、対流活動を活発化させたのは何か…?それは、北風の異様な強さから考えると、台風そのものの発達と同時に、西側の高気圧がかなり加勢したのかも知れません。これが、特別警報発表となった大雨の要因の一つかな、と考えられます。

<東西の力士(高気圧)の勢力は、こんな所にも…>

13時東北<16日13時レーダーエコー、アメダス風分布>

東北地方の13時の状況です。宮城県側のすごい強い南東風、秋田・山形側のすごい北西風、このぶつかり稽古はスゴイ。台風の中心は、このときまだ栃木県宇都宮あたりです。大型の台風で、宮城県の南東風の強風っていうのは分かりますが、日本海側の北西風は…。やはり、今回は台風の通り道を窮屈にしていた高気圧の存在をムシすることはできなそうです。

いや~。不思議なこと、すぐには理解できないこと、いろいろ起きたもので…勉強することが多くて、息切れしてしまいますね^_^;。

 

 

 

 

 

2013年9月17日~天気はコロコロ変わる~   合同会社てんコロ.
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