今週もまた大気の状態が不安定です

天気予報は、ホントに「上空寒気」が好きですね。でも、大気の状態が不安定というのは、上ばっか見てても全く意味がありません。それは、気象予報士の勉強を始めると、一般分野のわりと早いうちに勉強することです。

<28日12時 500hPa気温・高度・渦度>

<28日15時 850hPa相当温位・流線>

<28日12時> 明日は、東京の上空あたりはー17~ー18℃ぐらいだけど 寒気の中心にはー24℃以下。 <28日15時> 下層(850hPa)の流れを見ると、東海上の高気圧性循環と 日本海側の低気圧性循環のせいで、関東地方でちょうど 南東風と西系の風が収束する形となって、主に南海上の方から 相当温位315K以上の空気が流れ込む予定。 谷の深まり方、寒気の入り方、下層の暖湿気流入と収束… これは積乱雲が発達する条件としてはかなり揃っています。注意が必要ということです。

さらに、29日にはもう一段階強い寒気が入ってきます。なんだか前回(5月6日~10日)の騒ぎを思い出します。しかし、先ほども言ったように、大気の状態は、別に上空の寒気だけで決まるわけではありません。テレビの天気予報では「上空と地上の温度差」の話を強調して話す方が多いようですが、「地上と上空の気温差が40℃以上ですごい不安定」と言ってしまうと、真夏の熊谷なんてどうなるでしょうか?当たり前のように最高気温が35℃を超える真夏、その時期の上空500hPa付近の平年値はー4℃~-5℃です。毎日毎日、大気の状態が不安定で竜巻におびえて暮らしているのですか??という話です。そんなことないですよね?

気象予報士という資格はポピュラーになりつつありますし、テレビで活躍する人もたくさんいらっしゃいます。すごく努力して、一生懸命勉強して、資格を取って、オーディションに合格して…そうしてテレビで解説しているのですね。どんな業界でもそうだとは思いますが、資格を取った所はゴールではなく「始まり」です。実際、私は予測の現場に入ってからの方がたくさん勉強しました。勉強の量ということではありません。毎日毎日「なんで晴れたのか?なんで曇ったのか?なんで雨が降ったのか?」など、自分なりに検証、先輩方に聞いて勉強、そんな毎日ということです。これは、今も変わりません。そして、これからも変わらないと思います。まして、お天気は気まぐれですし、どんな「現象」が何が「原因」で発生しているのか?なんていつも同じではありません。大気の状態は1秒たりとも同じ状態っていうのはあり得ないことですから、「分からん!」ということも多々あると思うのです。なのに、テレビの天気予報は、いとも簡単に現象の原因を結論づけます。すごいです。ですが、それがホントに正しいのならいいのですが、やはり十分な検証もせずに、すぐ原因を特定してしまうものだから、中には明らかに間違っていることがあるのです。テレビの天気予報、報道の体質なのでしょうか。報道だって視聴率が欲しいでしょうから、必要以上に騒ぎ立てたい気持ちも分かります。だから、何か突飛な現象が発生すれば、その原因をすぐにも特定したがる。そして、騒ぎを大きくしたがる。しかし、そこでその騒ぎに飲み込まれず現象を冷静に受け止めて、落ち着かせるというのも一つ気象予報士の役割なのではないでしょうか。気象予報士は「専門家」なのですから…。

気象予報士の仕事はキャスターだけではありませんが、やはり花形のキャスターにあこがれて、そしてお天気キャスターを目指して勉強している方も多いと思います。そういう方には、ホントに頑張ってほしいですし、そしてその夢を実現させてほしいと心から思います。でも、やっぱりキャスターになった後の振る舞いこそが重要だと思うのです。不特定多数の人が、自分がしゃべる天気予報を目にするわけですから、それはそれは大きな責任があるということを忘れちゃいけないということです。それでも、責任ばかり考えて、自信なさげに出演されても困りものです。キャスターは、胸を張って、自信もって出て行かなければなりませんから。難しい仕事ですね。実際の天気予報をたくさん見て(内容を勉強するためだけでなく)、何が足りないのか?自分だったら、どんな風に現象を伝えるだろうか?そんなことを考えてみるのも、いいかも知れません。なんだか、説教じみてしまいましたね…^_^;。

2012年5月28日~天気はコロコロ変わる~   合同会社てんコロ.
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