風の急変(3月27日)

昨日(3月27日)はもともと,上空のトラフの通過後,夜には北よりの風が強まる予想になっていました.下図は左が26日9時,右が26日21時の解析です

実際,高度渦度解析図でも当初の予想通り,5520~5580mの強風軸付近,北陸にさしかかろうとしている正渦度極大値(+270)がありますが,これが東日本を通過して夜には東海上に抜けています(+323).500hPaの寒気の動向を見ると,実は朝9時の段階で先行するトラフとともに500hPaや700hPaの寒気の中心は東海上にすでに抜けている状態で

↑(左:500hPa気温・流線,右:700hPa気温・流線26日9時イニシャル)

それより下層の寒気はあとから南下してきました.↓(850hPaの気温・流線,26日9時解析)

下層寒気が入るのと同時に,上空は北西風の強風が揃って,強風軸が東日本の上空を通るようになるという状況です.

地上風(アメダス風)の変化とレーダーエコーを重ねたものを並べてみます(14時~16時まで30分間隔).時間経過とともに内陸の北西風が強まりながら南下してきます.一方,関東南部は南よりの風が卓越し,逆に時間とともに風速もちょっと強まってきます.14時半ごろから北よりの風と南よりの風の境界にあたる東京と神奈川の県境付近で東西方向に分布するエコーが見えてきますが,それが15時から15時半ごろにかけて,やや強まりながら南下て,16時には神奈川県の南部まで北よりの風に変わりました

さらりと「北よりの風に変わりました」などと言いましたが,この北よりの風に変わるときが,急変だったわけです(下の表の黄色で塗った時間帯あたり).15時20分に,それまでの南よりの風が北よりに変わり,15時30分には急に瞬間風速が10m/sを超えるようになりました.数字でもすごいことは分かりますが,それまで2~3m程度の弱風だったところから,一瞬にしてこんな強風が吹いてきたことを想像したらとても怖いですよね.

私は,この事例に関して,自分自身とても反省しているのです.私は,この風の強まりを「急変する」とは伝えられませんでした.

強風になると分かっていても,ではどのように強まるのか?という部分は,しっかり予想して確実に伝えなければならないところだと思っています.しかし,収束線上に予想にはなかったエコーが出てきている時点で,風の急変は想像できるわけですから,それをキャッチしたらちゃんと伝えられたかも知れません.幸い,この急な風の強まりに関連しての事故などはありませんでしたが,実況に現れてることから,危険を把握する,もっとアンテナを張っておく必要があるなと...こんな,気象予報士取ってから年数ばっかりベテランになってる今更ですが,気を引き締めていかねばと思いました.

 

 

 

 

 

2021年3月27日~天気はコロコロ変わる~   合同会社てんコロ.
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