長野県の南部にかかっていたエコー

昨日、長野県の南木曽で土石流が発生して、大変な災害になりましたね。「南の海上から前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込み、大気の状態が不安定だった」と言いますが、それはハッキリ言って東海から関東にかけて、どこも同じ状況です。大きく見れば。手持ちの資料だけで、もう少し細かく見てみます。なお、ココで出すMSMの資料は初期時刻から3時間後の予想図です。そうなっていたのかも知れない、という見方をしてくださいね。

<そもそも、お昼頃に紀伊半島にまとまったエコーがあった>

長野県の南部で大雨をもたらしたエコーを、時間を巻き戻して見てみると、どうやら火種は紀伊半島の南部にあるようです。火種、というと語弊がありますが、この辺りでまとまって出ているエコーの原因が、移動してきたのかしら、と思われます。

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そこで、12時の時間の、925hPa相当温位・風の状況を見てみます。左が12時、右が15時です。

 

MSM_14_0709_1200925の相当温位・流線MSM_14_0709_1500925相当温位・流線

351K以上の高相当温位の領域に着色してあります。高気圧の縁辺で、細長く、紀伊半島に高相当温位の空気が流れ込む表現が出ています。351K以上の領域を追跡すると、15時には岐阜~長野県南部に達していることが分かります。この、周りよりも水蒸気量の多い空気塊がこのように流れていることは、降水量が多くなる領域に関係ありそうです。

<エコーの動きは、こんな感じ>

15時から30分間隔で、レーダーエコーの変化を見てみます。ホントは、5分間隔で動かして見るのが一番なのですが。右、左、右、左…という時間経過です。925hPaの高度で351K以上の高相当温位の空気が入る表現となっていた、その先端あたりに、ちょうど強いエコーが分布しているようです。この辺りは、ちょうど山沿いにあたる所です。発達したエコーの先端は、次第に東へ移動し、次第に南木曽に到達します。(星印)

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間違えてはいけないのは、発達したエコーがそのままやってきているわけではありません。発達しやすい状況が東進してきた、ということで、世代交代はしています。さて、この南木曽の辺りを、もう少し細かく見てみます。

<エコー頂高度で見てみる>

この発達したエコーは、一体、どれぐらいの高度まで発達しているのでしょうか。鉛直方向の断面図を見てみます。925hPaの風向が南西風だったので、風向に沿って下の所で断面を切ってみます。ちなみに、この図では下の方に地形も現れます。

断面とった名古屋~南木曽~伊那を結ぶラインで、バサっと斬る。

1.5 2.5 3.5 4.5 5.5 6.5 7.5 8.5 9.5

星印(所々ついてたり、ついてなかったりしますが)が南木曽です。山に注目すると、一つ大きな山がありますが、これは駒ケ岳です。そして、細かく見ればその手前の山も1000m以上はあります。南木曽岳(標高は1600m以上)のようです。この解像度でこれぐらいの山を細かくみるのはナンセンスかも知れませんが。でも、手前の山で、エコー頂が特に高く、発達しているようです。ここがちょうど、南木曽にあたります。

<大気の状態が不安定なのは…>

上空の寒気や下層との温度差で語られますが、それは降水量の多寡を説明するのには不十分です。そもそも、昨日なんて上空に暖気が入ってくる段階で、温度場だけで見れば、安定の方向に向かっているハズです。そこで、このようにエコ-が発達するのは、やはり下層の水蒸気量がいかに大事か、ということだと思います。水蒸気をたっぷり含んだ空気塊は軽いです。そんな軽い空気塊だからこそ、ちょっと躓いた位の山であっても、水蒸気が補給され続けるとこんなことになるのでしょうか。大気は、下層の下層、最下層から、300hPa、200hPaと、上層の方まで見ないとダメですね。そんなことを実感しています。

 

 

2014年7月10日~天気はコロコロ変わる~   合同会社てんコロ.
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